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人生最大の買い物と言われるマイホームを購入する際は、ほとんどの方が住宅ローンを利用すると思います。住宅ローンを利用してお家を購入する場合、購入者の金利負担を軽減して住宅投資をしやすくする「住宅ローン控除」の適用を受けることができます。ここではお家を購入した方、これから購入しようと考えている方向けに、住宅ローン控除の仕組みと具体的な方法について解説します。
「住宅ローン控除」とは、住宅ローンを利用してお家を購入した場合に、年末時点での住宅ローン残高の0.7%が、入居時から最長13年間にわたって、給与などから納めた所得税や住民税から控除される制度です。「住宅ローン減税」とも呼ばれますが、正式には「住宅借入金特別控除」といいます。
住宅ローン控除は、一定の要件のもと、新築住宅の購入のほか、中古住宅の購入やリフォームにも利用できます。
住宅ローン控除は以前からありますが、2022年に一部内容が変更されました。税制改正には大きく2つのポイントがあります。
地球規模のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)、すなわち持続可能な社会に向けたビジネスやライフスタイルの変化への流れを受けて、我が国でも環境性能の高い住宅の普及が後押しされています。
具体的には、耐震性や省エネルギー性などの認定要件を満たした「長期優良住宅」や、低炭素化のための措置が施された「低炭素住宅」、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」水準の省エネルギー住宅、断熱性や気密性に優れた「省エネ基準適合住宅」に対して、一般の住宅よりも高い借入限度額が設定されています。
逆に、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅では、一定の省エネ基準適合を満たさないと住宅ローン控除の適用を受けられなくなります。
2022年の税制改正以前の住宅ローン控除では、控除率は1%で、控除期間は10年間(特例措置では13年間)でした。2022年以降に住宅ローン控除が適用される方は、控除率は0.7%、控除期間は13年間(既存住宅及び増改築では10年間)となります。控除率は下がりましたが、控除期間が長くなったことで、住宅ローンを利用される方にとってはメリットの大きな制度といえるでしょう。
住宅ローン控除の適用を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。購入するお家が新築住宅なのか、中古住宅なのか、あるいはリフォームなのかによっても内容が異なりますので、それぞれの適用条件を詳しくみていきましょう。
新築住宅の場合は、次の条件を満たすことで住宅ローン控除の適用を受けることができます。
①住宅の新築または取得した日から6ヶ月以内に居住し、原則として控除適用年の12月31日まで居住していること。
②控除適用年分の合計所得金額が2,000万円以下であること。
③返済期間が10年以上である一定の住宅ローン等の残高があること。
④住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上が控除を受けようとする方自身の居住用であること。ただし、2023年以前に建築確認を受けた新築住宅の取得等にかかる住宅ローン控除については、控除適用年分の合計所得金額が1,000万円以下である場合、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅も控除の対象となります。
※床面積の基準は、登記簿に記載されているものとなります。
中古住宅の場合は、新築住宅の適用条件に加えて、次のいずれかの条件に該当していれば住宅ローン控除の適用が受けられます。
①登記簿上の建築日付が1982年1月1日以降であること。
②地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準、またはこれに準ずるもの(耐震基準)に適合していること。
③上の①または②に該当しない住宅(要耐震改修住宅)について、その取得日までに耐震改修工事の申請等を済ませ、かつ居住日までに耐震改修工事を完了していること等の一定要件を満たすこと。
次のいずれかの工事に該当するリフォームで、工事費用が100万円を超え、かつ工事費用全体の2分の1以上が居住用部分にかかり、新築住宅の適用条件を満たす場合は、住宅ローン控除の対象となります。
①増築、改築、建築基準法に規定する大規模な修繕、または大規模な模様替えの工事。
②マンションなどの区分所有の建物における区分所有の床、階段、または壁の過半について行う一定の修繕・模様替えの工事。
③家屋の居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関、または廊下の一室の床、または壁の全部について行う修繕・模様替えの工事。
④耐震基準に適合させるための修繕・模様替えの工事、一定のバリアフリー改修工事、一定の省エネ改修工事。
リフォームについては、耐震、バリアフリー、省エネ、耐久性向上、多世帯同居のリフォームの場合に、所得税から最大80万円の控除が受けられる「リフォームの特別控除」という税制優遇制度もあります。このうち耐震に関するリフォームは、住宅ローン控除と併用できます。
リフォームや増築の適用条件は複雑なため、住宅ローン控除の利用を検討する際は専門家に相談するとよいでしょう。
「買取再販住宅」とは、不動産業者が既存の住宅を買い取り、リフォームして販売する物件です。買取再販住宅の場合は、新築住宅の適用条件に加えて、次の条件を満たすことで住宅ローン控除の適用を受けることができます。
①宅地建物取引業者から住宅を取得していること。
②宅地建物取引業者が住宅を取得し、リフォームして再販するまでの期間が2年以内であること。
③新築してから10年以上経過している住宅であること。
④建物価格に対して、リフォームの工事費用が20%以上を占めていること。
⑤大規模修繕や耐震基準に適合するための工事、バリアフリー改修、省エネ改修などの対象となる工事が行われていること。
住宅ローン控除の適用を受けるためには、住宅ローンに関する適用条件もあります。
返済期間が10年以上であることは新築住宅の適用条件の項で紹介しましたが、居住用で土地と建物が一体として借りられていることの他、次のいずれかの借入れに該当する必要があります。
①銀行
②農協・信用金庫・信用組合
③住宅金融支援機構
④地方公共団体
⑤各種公務員共済組合
⑥勤務先(市場金利を勘案して定められた0.2%以上の金利があること、2016年以前に居住用とした場合は1.0%以上の金利であること)
住宅ローン控除では、例えば2023年末までに入居することを前提に、長期優良住宅を新築で購入するために5,000万円の住宅ローンを借りるとすると、年間最大控除額35万円×13年間という単純計算で「455万円が戻ってくる」という訳ではありません。最大控除額は条件によって個々に変わりますし、そもそも住宅ローン残高は年々減少します。納めるべき所得税や住民税以上のお金が戻ってくるというものではないのです。
実際にどのくらいのお金が戻ってくるか、Aさんをモデルとしてシミュレーションしてみましょう。
《Aさんのケース》
Aさんは35歳の会社員。3,800万円で新築戸建住宅(長期優良住宅)を購入し、2023年中に入居します。400万円は自己資金を使って、3,400万円の住宅ローンを借りることができました。
Aさんの年収は500万円で、給与所得の控除額は144万円(500万円×20%+44万円)で、給与所得控除後の所得金額は356万円となります。所得控除額の合計は160万円、所得税額(源泉徴収税額)は10万円、住民税額は20万円でした。
年末時点での住宅ローン残高は3,350万円。住宅ローン控除額は「年末時点での住宅ローン残高×0.7%」ですから、これを計算すると234,500円となります。
Aさんの所得税額は10万円で、所得税額分は全額が控除されます。
所得税額で控除できなかった残り134,500円については、住民税額から控除されます。ただし、住民税からの控除額は「所得税の課税総所得金額等の合計額の5%」と決められており、最高97,500円です。Aさんの所得税の課税総所得金額は356万円-160万円=196万円。住民税からの控除額は196万円×5%=98,000円と計算され、上限の97,500円が控除額となります。
最終的に、所得税からの控除額の10万円と、住民税からの控除額の97,500円の合計額である197,500円が住宅ローン控除の額と計算されます。
住宅ローン控除の適用を受けるためには、入居した翌年のうちに「確定申告」をする必要があります。確定申告は、居住地を管轄する税務署で出来ますが、郵送やインターネットでの手続きも可能です。確定申告をしないと、納め過ぎた所得税を還付してもらう「還付申告」ができないため、住宅ローン控除の適用を受けられなくなるので注意しましょう。
Aさんのような給与所得者の場合は、2年目以降は確定申告をしなくても、勤務先の年末調整で住宅ローン控除の手続きができます。2年目以降の手続きは、10月下旬頃に手元に届く「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書」と、金融機関からの「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」を勤務先に提出することで済みます。
マイホームの購入では、一定の要件を満たせば「住宅ローン控除」の適用を受けることができます。住宅ローン控除は、長引く景気低迷のなかでも住宅投資をしやすくし、また持続可能な社会へのシフトを促す国の税制優遇策です。マイホームの購入をお考えの方は勿論、リフォームにも利用できますので、適用条件を確認したり、専門家に相談したりして、積極的に活用するとよいでしょう。
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